JST育成研究課題

平成17年度採択課題 (18年度~20年度)

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代表研究者   : 三浦 浩治
    〔愛知教育大学 教育学部 物理領域 教授〕

共同研究機関 : 愛知県産業技術研究所
共同研究企業 : サハシ特殊鋼株式会社
            セイコーインスツル株式会社
            中京化成工業株式会社
            日産金属株式会社
            中央発條株式会社

カシミール斥力による量子浮揚研究と超潤滑技術開発

概要

 C60単層膜をグラファイト層間にインターカレートすることによって作製されたフィルムは、超潤滑の性能を発揮できることが確認できていることなどから、工業化、商品化はきわめて有望である。この摩擦ゼロフィルムを自動車等の大型機械からナノマシンまでさまざまなサイズの機械、機器に適用することができれば、摩擦の極めて少ない夢の摩擦ゼロマシンを実現することが期待される。本研究では、グラファイト層間へC60単層膜を安定的に簡便かつ迅速に封入する方法を開発するとともに、摩擦ゼロフィルムをグリースやオイルに混入することによって潤滑性を評価し、新規摩擦ゼロフィルムの開発とその事業化を検討した。

本研究開発はカシミール(Casimir)効果と呼ばれる量子効果を用いれば、エネルギーを消費することなく安定に物体を浮揚できることを示すために行われたものである。近年適当な液体を用いるとカシミール力を斥力に反転できることが基礎的実験で示された。さらに、適当な固体物質間の形状・配置を選択することによって、カシミール斥力の大きさを最大にすることができる。従って、本研究開発では、カシミール斥力を発現する液体と、2種類の固体物質の探索、及び固体間の形状・配置の最適化によって最大のカシミール斥力を実現することを目標とし、その後、最大のカシミール斥力による量子浮揚を用いた超潤滑技術の構築を目指す。

摩擦係数0.01をもつ超潤滑グリース、超潤滑オイルの開発研究

プロジェクトリーダー  : 三浦 浩治
      〔愛知教育大学 教育学部 物理領域 教授〕
側面支援機関 : 名古屋中小企業投資育成株式会社

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研究開発期間 (平成23年10月~24年9月)

グラファイトとフラーレンによる超潤滑システムの実用化研究

JST戦略的想像研究推進事業(ALCA) 分科会名「非特定領域」

「愛知教育大学」グループ  : 三浦 浩治
      〔愛知教育大学 教育学部 物理領域 教授〕
「兵庫県立大学」グループ  : 乾 徳夫
      〔兵庫県立大学 工学研究科 准教授〕

JST研究成果最適展開支援事業フィージビリティスタディ可能性発掘タイプ 企業検証

 本研究開発では、液体のブロモベンゼンと固体の金、シリカの組み合わせ以外のカシミール斥力を発現する可能性のある液体と2種類の固体物質の探索と最大のカシミール斥力がいかなる組み合わせで起こりうるかを調べた。支援グループでは、固体物質の形状を考慮したカシミール力の理論計算を行うことによって、最大カシミア斥力を発生する形状を求め、実験で検証し、さらに、カシミール力への表面の凹凸の効果を計算で求め、表面の凹凸によるカシミア力への効果、影響を実験的に評価した。支援グループによって理論的に予想された液体と2種類の固体物質ではカシミール斥力の発生が確認されたが、どの組み合わせが最大のカシミア斥力を持つかについては本装置の精度上示すことができなかった。このため、カシミール力の測定精度の高い熱励起型走査顕微鏡装置の開発を行い、それを用いて最大カシミア斥力を発生する組み合わせを調べる研究を行った結果、ブロモベンゼン、シクロヘキサンの両方の液体に関わらず、基板固体としてテフロンを用いた場合に、シリカ基板の場合に比べてより大きなカシミール斥力を発生することがわかった

プロジェクトリーダーが発明した超潤滑分子ベアリング材料(国際特許出願: PCT/JP2004/18016)は、グラファイト基板を化学処理によってC60単層膜とグラフェンが交互に繰り返すように、C60単層膜をグラファイト層間にインターカレートしたものである。さらに本材料は、C60フラーレン分子をグラファイト内に内包していることにより、高機能性を備えている新材料である。 
 本研究では、開発された超潤滑分子ベアリング材料をグリースやオイルに混入することよって、摩擦係数0.01(またはそれ以下の摩擦係数)の超潤滑グリース、超潤滑オイルの商品化を目指す。超潤滑グリース、オイルの中から事業化、起業化に有効な商品の検証を行う。

研究内容、研究成果

 超潤滑材料をオイル、グリースに混入することによって、摩擦係数0.01(さらにそれ以下の摩擦係数も指向する)にする超潤滑グリース、超潤滑オイルを作り、作製された超潤滑グリース、超潤滑オイルを用いて事業化、起業化するのに有効な潤滑分野の検証を行い、それに焦点をあてた商品開発を進めることを目指した。真空加熱法により不純物を取り除いた超潤滑粉末を作製した結果、摩擦係数0.03 程度の超潤滑グリース、 超潤滑オイルが得られた。超潤滑粉末の作製日数が、実用化可能な作製日数10 日程度まで短縮された。この性能が安定的に発揮できることが確認できれば、個人ユースを対象にした商品化の可能性があると考えられる。さらに、量産効果等により100 円/1グラムレベルまでC60 フラーレンコストが下がると、一般商品として実用可能であることが調査結果から確認された。

概要

研究内容、研究成果

平成21年度採択課題

研究開発目的

 オイル、グリースなどの潤滑性の向上のためには、グラファイト層にフラーレンが一様に封入されることおよび添加する超潤滑フィルムのサイズなどが重要である。そこで、グラファイト層をフラーレンが封入できる十分な層間隔になるように一様に拡大した。はじめに、グラファイト粉末を硫酸、硝酸ナトリウムおよび過マンガン酸カリウムを用いて酸化することにより、層間が一様に拡大した酸化グラファイトを作製した。次に、酸化グラファイトの層間にオクチルアミンを挿入することにより、酸化グラファイトの層間をさらに拡大した。その後、層間が拡大したグラファイトをフラーレン/トルエン溶液に加えることで、拡大したグラファイト層間のフラーレン挿入を試みた。さらに、過剰なオクチルアミンを除去するために塩酸により処理した。作製した試料は、X線回折とFT-IRによりグラファイトの層間にフラーレンが挿入されていることが示された。また、作製した試料から得られた高分解能TEM像において、フラーレンの存在を確認できた。
 本粉末フィルムをグリースへ混入した場合における高速四球試験機により評価した磨耗体積および磨耗痕は、グラファイト粉末とフラーレンを単に混合した試料、及び一般的に添加剤として使用されるグラファイトや二硫化モリブデン(MoS2)よりも格段に優れた潤滑性を示した。さらに、オイルおよびグリースへ混入した場合のブロックオンディスク磨耗試験では、摩擦係数0.05を下回る極めて良好な結果を示した。したがって、本試料がオイルやグリースの添加剤としても極めて有効であることが示された。

 本開発研究の成果は、有機固体物質のマイクロ粒子を用いた場合、特別な基板、液体を用いなくても一般に浮揚することを示している。この知見をもとにすると、実用化への道として、マイクロサイズのチューブ管の中を液体分子が移動可能なナノ流路、マイクロ流路デバイスの開発、固体表面間に液体を通すことができる固体間流動を用いた固液システムの構築、固体表面上の界面活性剤、オイルのぬれ性制御等の応用が考えられる。

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研究内容、研究成果

今後の展開、将来の展望

今後の展開、将来の展望

 オイルやグリースへの添加剤としての機能を評価するために、添加剤の含有量を変えて最適な条件を調べる予定である。
また、オイルやグリースなどの用途に応じた添加剤としての最適な超潤滑フィルムのサイズを調べるとともに、最適なサイズの超潤滑フィルムを作製するために、超潤滑フィルムのサイズの均一化方法について検討する予定である。さらに、新規超潤滑フィルムの製品としての安定的な供給技術を確立するとともに、大規模化および効率化によるコストダウンを検討する。将来的に、超潤滑システムを可能にする摩擦ゼロフィルムの機構は、オイルやグリースの添加剤だけでなく、新たな製品への応用も期待できる。